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東京高等裁判所 昭和30年(ナ)9号 判決

原告 渡辺大作

被告 真壁松太郎

主文

昭和三〇年四月三〇日施行の新潟市議会議員選挙における被告の当選は無効とする。

訴訟費用は被告の負担とする。

事実

原告訴訟代理人は主文同旨の判決を求め、その請求の原因として次のとおり述べた。

一、原告は主文第一項記載の選挙において選挙人であつた。

二、被告は右選挙に立候補し、選挙の結果当選し、新潟市選挙管理委員会によつてその旨告示された。

三、しかるに、被告の、右選挙における出納責任者であつた訴外近藤三代平は公職選挙法第二二一条の罪を犯し、これがため昭和三〇年七月一日新潟簡易裁判所において略式命令により罰金三、〇〇〇円に処せられ右裁判は同月二一日確定した。

四、よつて公職選挙法第二五一条の二第一項の規定により被告の当選は無効であるから、同法第二一一条第一項の規定により本訴に及ぶ。

被告訴訟代理人は請求棄却の判決を求め、答弁として次のとおり述べた。

原告の請求原因一、二の事実は認める。同三、の事実中訴外近藤三代平が被告の出納責任者であつたという点は否認し、その他は認める。右訴外人を被告の出納責任者とする届出がなされたとすれば、それは被告の意思に反してなされたものである。(証拠省略)

理由

原告主張の事実のうち、その主張の選挙において訴外近藤三代平が被告の出納責任者であつたという点を除いてはすべて当事者間に争がない。そこで本件唯一の争点であるこの点について判断するに、成立に争なき甲第四号証と証人近藤三代平の証言の一部によつて認められる訴外近藤三代平は前記略式命令により被告の出納責任者として処刑されながらこれに対し正式裁判の申立をなすことなくして右命令を確定せしめている事実に、成立に争なき甲第一号証、成立に争なき同第三号証の供述記載の一部、証人田辺政敏、近藤三代平、阿部松雄の各証言の一部、被告本人の供述の一部を合せ考えると、原告主張の如く訴外近藤三代平は被告の出納責任者であつたと認めるのが相当であつて、証人田辺政敏の証言中、同訴外人において被告にも右近藤にもはかることなく自らの独断で事実に反して右近藤を被告の出納責任者として届け出た旨の供述部分並びにこれに符合する右証人近藤三代平、阿部松雄の各証言部分及び被告本人の供述部分は到底信用することができず、他に右の認定を動かすべき証拠は存しない。

然らば原告の本訴請求は正当として認容すべく、訴訟費用の負担につき民事訴訟法第八九条を適用して主文の如く判決する。

(裁判官 薄根正男 奥野利一 古原勇雄)

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